週末の朝。
ある繁華街を歩いていたら
片道3本の車道に
人が寝ていた。
年齢は50過ぎくらいに見え、
背広(スーツという単語が不似合い)を着た
男性。
決して汚いおっさんではない。
髪はパーマをかけたような、
ウェーブがかかっていて、
先を進みたいのに、
憎々しくも放っておけない
ものを見つけてしまった
私のイライラの感情から
判断を間違えているのか、
彼が着ているワイシャツは
洒落ていた。
靴は左右脱いで車道に点在していて、
鞄は寝ている自身の横に置かれている。
明らかにその姿は酔っ払いだ。
このまま寝ていたら
車にひかれて死んでしまう。
歩道の端っこに立って、
私は彼を覗き見る。
車道を走る車は彼をよけて
通り過ぎ、
バイクの人は、
彼を一瞥して通り過ぎ、
信号が赤になると、
運転手は皆、彼を見ているが、
信号が青になると
通り過ぎる。
歩道を歩く人も、
皆、一応に彼に気が付くが、
通り過ぎる。
外人のグループは、彼を見つけて
笑い合って通りすぎる。
でも彼はこのまま
ここで寝ていたら、
車にひかれて死んでしまう確立は、
ゼロではない。
困ったなぁぁぁ。
と私は思いながら、
彼に声をかけてみた。
「ちょっとーーーー!!!
そんなところに寝ていたら
ひかれちゃいますよ~!!!」
「ちょっとーーーー!!!!」
「ちょっとーーーー!!!!」
「ちょっとーーーー!!!!」
「おーーーーい!!!!!!」
ゼイゼイ・・・・っ。
昔あったセカチューの映画の中で、
山田孝之が長澤まさみを
胸に抱きながら叫んだくらい
大きな声を出して私は叫んだ。
その男性、うっすらと目を開けて
何やら私のただならぬ声に
気が付いたのか。
でもかなりの酩酊のようで、
彼は右腕をうっすらと地上から上げ、
まるで映画のETが、
いびつで長い指を、
自分がどこから来たのか
指し示す時に、
遠い空の向こうを指す時のように、
人差し指を挙げて、
彼は空を指した。
「聞こえてるんだけどさ~
おら、全く体が言うこときかねえだ~」
とその人差し指は
語っているように思えた。
次に信号が赤になったので、
車道に私は出て、
「ここで寝てたらひかれるから
歩道に移動したほうがいいですよーーー!!」
・・・・。
「ひかれるよーーーー!!!」
絶大なる声を
彼の耳に向かって
叫んだ。
歩道を歩く人、
車の運転している人、
皆こちらを見て、
私を見ているのがわかる。
おっと信号が青になりそうなので、
私は歩道にもどる。
私は、その男性が寝ている車道の
すぐ目の前にある、
カフェでモーニングを
食べるためにそこを通ったのだ。
考えた。
このまま私ががたがた
セカチューまがいのように
叫んでも、埒が明かない。
110番しよう。
私は、そのカフェに入って、
モーニングを注文し、
お金を払い、
店の住所を、
若くてかわいい男子店員に聞き、
自分の席で、
110番することにした。
席に座り通報する。
(まわりに客はいない)
「すると事件ですか事故ですか?」
女性の淡々とした強い意志を感じる
声で応答。
「事件でも事故でもないのですが、
男性が車道に寝てるので危ないので」
私が喋るのが終わるか終わらないくらいに
「警官行かせますので、住所を教え下さい」
それ来た!
と思い、私は、住所を伝える。
ビル名も伝える。
男が寝ている車道沿いの歩道にある、
大きな目印しになる、
私が今居る、カフェの店名を言う。
フランチャイズの店だから、
よくわかる目印でもある。
すると応対している
電話の女性は、
警官が行くまで、
その男性の寝ている車道の近くで、
待っていてくれというのだ。
そして、私の名前を聞く。
名前を名乗った私は、
はた困ったと思う。
なぜなら、私はモーニングの
ホットサンドイッチを注文していた。
その電話をしている間に、
ちょうど、そのホットサンドが
私の手元に来て、
いざ食べるという時を
迎えていた。
この温かいホットサンド。
レタスが光って、
ハムと黄色い卵が私を誘っている。
「うっ・・・・」
人命とこのホットサンドの
どちらを選ぶのか。
私は悔しかった。
そのサンドから目をそらすのが。
「もぉぉぉーーー」
私は、貴重品の入ったバックを
引っ張り上げ、
いざ、店の軒先の
男の寝ている車道の歩道に出た。
彼は今度は、背広の上着を
脱ぎ始めていた。
ここは彼のリビングではない。
何をくつろごうとしているんだ。
通行人は、皆彼を見ている。
私は日傘を店内に忘れて
きたことを後悔した。
元気一杯の太陽が、
ジリジリと腕と頬と
首をやく音が聞こえるようだった。
でもきっと、
警官が来るまで
数分だろう。
そんなに長くならない
と思った。
と思っていた。
近くに交番があることを
私は知っている。
少しの辛抱だ。。。
通りすがりの親切な女が
自分を見守ってくれていることを知らない
酔っぱらった男は、
何やらモソモソと動きながら、
呑気に寝っ転がっていた。
暑い。
熱い。
灼熱の太陽が暑い実感は
日々感じているが、
ジリジリと地肌が
やける熱さを実感しながら
立っている私は
「シミができちゃう。。。
シミができちゃう。。。
早く来て~。」
もう車道の男が車にひかれる
ことよりも、
自分が日焼けしてしまう
ことを心配し、腹が立っていた。
そこへ、歩道の反対側に、
チャリに乗った1人の警官が、
こちらに来るのが目に入る。
よしっ! 来た! 💛
警官は、丁度横断歩道の信号が
青になったので、
横断歩道を私が立っている歩道
の側に向かって、渡ってくる。
私は、その警官に向かって、
大きく手を手を挙げる。
チャリに乗ってこちらに
向かって歩道を渡って来ている
警官に向かい、
私は、
車道で寝ている男性を指差し、
「あれ!」
と合図した。
これで、私はお役目ご免。
あのホットサンドが食べられる。
心がほっこりした。
のはずだった。
と思っていた。
がなんと!!!!!!!!
その警官は、
私を一瞥して、
そのまま、
私の横を通り過ぎ、
交差点を通過して
行ってしまった。
へっ!?
キツネにつままれた気分だ。
何!?、何!?、何!?
どゆこと!?
私は走り去って行ってしまう
警官を目で追いながら、
えっ!? えっ!? えっ!?
なんで!?
心でこのフレーズを
連呼していた。
果たしてこの酔っ払いは
どうなるのか!?
続きはまた次回。
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